特別対談「軍用地の跡地利用を考える」
軍用地の跡地利用について定めた跡地利用特措法が令和4年3月31日で期限を迎えます。キャンプ瑞慶覧(西普天間住宅地区)の返還に携わってきた宜野湾市の松川正則市長と一般社団法人沖縄県軍用地等地主会連合会の又吉信一会長に「軍用地の跡地利用を考える」をテーマに、それぞれの立場から話していただきました。
地権者に喜ばれる計画を
――軍用地返還跡地は、沖縄県全体の発展のカギを握ります。それは那覇新都心や北谷町のハンビータウン、キャンプ桑江北側地区、泡瀬ゴルフ場跡地などの成功例からも明らかです。平成25年に公表された嘉手納飛行場より南の返還対象施設には、普天間飛行場や牧港補給地区など開発のポテンシャルの高い地域が含まれます。
そこで、軍用地返還跡地をめぐる問題や跡地利用の課題などを探り「沖縄県全体の発展につながる跡地利用とは何か」を考えていきたいと思います。まずは西普天間住宅地区の跡地利用に関わってこられたお2人に、そうした点について、お聞きしたいと思います。松川市長からよろしくお願いします。
松川:現在、宜野湾市では、平成27年3月末に返還された西普天間住宅地区の跡地利用に取り組んでいます。一番重要なことは地権者や地域住民と連携した跡地利用計画を作成することです。地権者に「返還されてよかった」と喜んでいただける計画づくりが必要で、そのためには国や県など関係機関との連携が必要だと考えています。問題点を挙げるとすれば、文化財等を含めた現地調査です。調査のためには早めの立ち入りが必要ですが、なかなか実施できないので、そこは改善が必要だと考えています。実際にすべての跡地利用計画を作成した後も次々と文化財が見つかり、その都度計画の変更や調整が生じています。やはり文化財調査というのは、跡地利用を円滑にするため早めに立ち入りすべきだとあらためて感じました。
土地連とは
――それでは又吉会長よろしくお願いします。
又吉:まず土地連について紹介をします。設立は昭和28年で、県内でアメリカ合衆国内であるかのように供されていた土地の所有者が所属する地主会が集まって組織化されました。現在は、駐留軍用地、自衛隊施設用地及び県企業局用地(以下、「軍用地等」)の所在市町村の22地主会、20市町村会員で構成されています。その役割は、軍用地等に関する諸問題の適正妥当な解決を図り、会員の財産権を擁護し、福利増進を図ることです。その事業の一環で、跡地利用の支援を行っており、各地域の取り組み支援や、法改正に向けた要請活動等を行っています。
1番大事なのは地権者の合意形成
又吉:私が地域で会長を務める宜野湾市地主会でも、西普天間住宅地区において、地権者や宜野湾市と共に跡地利用に向けて取り組んでおり、土地連の後押しを受けました。返還の13年前から跡地利用に備えて連携したことで、地権者の合意形成が円滑に進みました。返還時期が不確定でも、事前に地権者との合意形成に取り組むことが一番大切です。
国へ求めることとは
――さて、跡地利用のためには跡地利用特措法がこれからも必要となりますが、国へはどのような要望をされていますか。
松川:平成24年4月に制定された跡地利用特措法では、基本理念として、国が主体的に跡地利用を推進すること、支障除去措置、土地先行取得の制度、さらに駐留軍用地跡地利用推進協議会の設置などの改正があり、跡地利用を進める上で非常に有効な法制度だと考えています。本市でも西普天間住宅地区に適用されて非常に有効だと実感しましたので、ぜひ延長してもらいたいと要望しています。沖縄県が取りまとめた「新たな沖縄振興のための制度提言」は各市町村や土地連の要望を加味してもらっているので、ぜひ実現してもらいたいと思います。もちろん本市単独では、実現できませんから、他の市町村や沖縄県、土地連と一体となり、この制度の延長及び見直しを強く求めていきたいと思います。
又吉:跡地利用特措法では、国の責務に基づく跡地利用の推進という基本理念、特定給付金の創設などが明記されたことで、地権者にとって安全・安心な返還、跡地利用ができるようになりました。同法は、令和4年3月末で期限が切れるので、今後も跡地利用が促進できるように、法律の延長と見直しが必要です。沖縄県が国へ求めている同法の延長及び見直しについての内容は、土地連の要望を受け入れていただいたものですから、今後も沖縄県と連携して国へ求めていきます。
普天間飛行場跡地に夢広がるまちづくり
――最後の質問です。沖縄の跡地利用は広大であるがゆえに困難を伴いますが、視点を変えれば開発可能なまとまった土地ができるということでもあります。476ヘクタールある普天間飛行場跡地利用のビジョン、提言などをお聞かせください。
松川:本市は普天間飛行場の跡地利用計画について、3点の目標を掲げています。1点目は「新たな沖縄の振興拠点の形成」です。跡地利用と連携し、中南部都市圏の中心に位置する大規模公園の整備や広域的な交通網の整備による広域的な都市基盤整備の再編・強化、および広大な空間における優れた環境づくりやまとまりのある用地供給の可能性を活かして、県内外からの新たな機能導入に向けた基幹産業等の集積拠点や新たな振興拠点を形成することを目指しています。2点目は「宜野湾市の新しい都市像の実現」です。跡地利用と周辺市街地整備の連携により、戦後76年もの長期間の基地使用に起因する都市問題の解決や新たな施策の導入により、次世代に継承する宜野湾市の新しい都市像の実現を目指しています。そして3点目が「地権者による土地活用の実現」です。基地があるゆえに損なわれた地域特有の自然・歴史環境の再生に取り組み、基地接収後の社会状況の変化にも対応し、地権者の意向を重視した新たな土地活用の実現を目指しています。普天間飛行場の跡地利用は、宜野湾市の振興はもとより沖縄振興のみならず日本全体の発展に寄与するものと考えており、その実現に向けては返還前からの取り組みが重要だと考えています。地権者や地主会、国や沖縄県などの関係機関としっかり連携し、夢が広がるまちづくりを進めていきます。
又吉:宜野湾市地主会では、平成23年から、普天間飛行場跡地の基本構想策定に向けて、地権者の子弟を対象とした勉強会を開催して人材育成に取り組んでいます。勉強会では大公園の構想など、夢あふれる構想が上がっています。跡地が負の遺産とならないよう長期的ビジョンで取り組むことが大切です。行政にも100年、200年先を見据えて計画していただきたいと思います。
注1:時期及び年は、最善の見込みである。これらの時期は、国外を含む移転に向けた取組の進展により遅延する場合がある。 注2:各区域の面積は概数を示すものであり、今後行われる測量等の結果に基づき、微修正されることがある。また、計数は単位(ha)未満を四捨五入しているため符合しないことがある。 注3:追加的な返還が可能かどうかを確認するため、マスタープランの作成過程において検討される。 注4:キャンプ瑞慶覧(西普天間住宅地区)の返還面積については、統合計画において52haとしていたが、実測値を踏まえ51haとしている。 注5:キャンプ瑞慶覧(施設技術部地区の一部)の返還面積については、統合計画において10haとしていたが、2013年9月のJC返還合意の返還面積を踏まえ11haとしている。 注6:普天間飛行場(東側沿いの土地、佐真下ゲート付近の土地)、牧港補給地区(国道58号沿いの土地)については、別途の日米合意により前倒しで返還されることとされた。なお、牧港補給地区(国道58号沿いの土地)には、2021年5月31日返還のランドリー工場地区分(0.2ha)を含む。 注7:JC(Joint Committee)-日米合同委員会
(出典:防衛省HP 沖縄県における米軍施設・区域の整理等より)
――本日の話を伺い、跡地利用の対応が沖縄の将来を大きく左右するものになることがわかりました。次世代に豊かで住みやすい沖縄を残すために、跡地利用特措法の期限延長及び見直しとともに、県土全体を見据えた機能分担や設計・開発に当たらねばならないと思います。その問題・課題を一つひとつ解決していくために、沖縄から発信し、主張して国を動かしていかねばならないと思います。本日はありがとうございました。
松川・又吉:ありがとうございました。