土地連会長からのメッセージ/一般社団法人沖縄県軍用地等地主会連合会(土地連)

沖縄の軍用地に関する問題解決、地主の財産権の擁護及び福利増進を行っています。

土地連連絡先

土地連会長からのメッセージ

本会が跡地利用特措法の期限延長及び見直しを求める理由について

 

今回は、今後、予定されている「跡地利用特措法の期限延長及び見直し」に関する本会の考えについて、発言させていただきます。

 

―沖縄における軍用地の歴史とは―

我々、軍用地主は在日米軍の安定的な駐留、円滑かつ効果的な運用を支え、日米安全保障体制を維持する上で大きく寄与しております。

戦後、米軍による強制収容により、軍用地となり、復帰後も国策により、なお、多くの米軍基地が存在しています。今日の、日本の安全と安心は沖縄の地主が担っているという事実があります。では、なぜ、米軍基地に民有地が存在しているのか、ご説明いたします。

1945年、沖縄だけが地獄を見た、鉄の暴風と言われた地上戦で県土は焦土と化しました。先人達は山原の疎開地から解放されて、故郷へ帰って来たのでありますが、そこに故郷はなく、住む家もなく、それでも米軍は朝鮮戦争への介入、ベトナム戦争への参戦等により、銃剣とブルドーザーで沖縄における基地の拡大拡充を急ぎました。

そうした27年間の米軍施政権のもとに塗炭の苦しみをなめ、1972年念願であった本土復帰を迎えたのでありますが、米軍はそのまま居座り、安全保障条約の肩代わりとして、国が軍用地料の支払いを続けることになったのです。強制接収により、地主の意思と関係なく私有地を奪われた。貸したくて貸した土地ではないことから、戦後77年にわたって耐えてきた軍用地主の我慢はこれまで相当のものであります。我々、軍用地主が今でも全国の70.3%の米軍基地を背負っているのです。そのことが、国民の安心と安全を守っていると言っても過言ではありません。沖縄の声、軍用地主の声を聞いて、国の責任に於いて跡地利用特措法を成立させる事が、沖縄の戦後に終止符を打ち、普天間飛行場を中心とした返還跡地の土地、空間活用が自立する沖縄経済の核となると信じています。

―本題:跡地利用特措法の期限延長及び見直しについて―

跡地利用特措法のお話の前に、返還跡地について少し触れさせていただきますが、沖縄県における、軍用地の返還跡地は、沖縄県全体の発展のカギを握っています。そのことにつきましては、那覇市の新都心地域や北谷町のハンビータウン、キャンプ桑江北側地区、泡瀬ゴルフ場跡地などの成功例から明らかであり、マスコミ等でも広く、これまで言われてきた周知の事実であります。

平成25年に公表された「沖縄における在日米軍施設・区域に関する統合計画」に基づき、嘉手納飛行場より南の返還予定施設(約1,000ヘクタール)には、普天間飛行場や牧港補給地区など開発のポテンシャルの高い地域が含まれています。そうしたことから、今後の返還跡地の利用のあり方次第で、沖縄の発展状況が大きく変わっていくことになります。

今年度末、駐留軍用地の跡地利用について定めた跡地利用特措法が期限切れを迎えます。
そこで、跡地利用特措法という法律がいかに沖縄県や軍用地主にとって重要であり、これからもいかに必要かという点。そして、跡地利用特措法のどういった点をさらに見直していくことが必要かという点などについてご説明していきたいと思います。

―跡地利用に不可欠な跡地利用特措法―

沖縄県全体の発展につながる跡地利用とは何かについて考える前に、地域の実例から紹介していきたいと思います。私が宜野湾市軍用地等地主会長として、宜野湾市のキャンプ瑞慶覧の西普天間住宅地区や普天間飛行場の返還に携わってきたときの経験から話したいと思います。

現在、宜野湾市では、平成27年3月末に返還されたキャンプ瑞慶覧の西普天間住宅地区の跡地利用に取り組んでいます。一番重要なことは地権者や地域市民と連携した跡地利用計画を作成することです。地権者に「返還されてよかった」と喜んでいただける計画づくりが必要で、そのためには国や県など関係機関との連携が必要だと考えています。宜野湾市地主会でも、西普天間住宅地区において、地権者や宜野湾市と共に跡地利用に向けて取り組み、土地連の後押しを受けました。返還の13年前から跡地利用に備え、連携したことで地権者の合意形成が円滑に進みました。返還時期が不確定であったとしても、事前の軍用地主の合意形成に向けた取り組みこそが一番大事です。地主会長の立場としては、軍用地主の意見をしっかり集約し、国などの関係機関に伝える努力をしました。特に、西普天間住宅地区については、コリドー地区との一括返還や、公共用地の先行取得の拡充と所得税の控除、確実な支障除去措置を求めてきました。国などとの調整は相当大変で、軍用地主の意見をまとめて返還に至ることは不可能かと思われた時期もありましたが、何度も何度も話し合いを重ねて、宜野湾市、宜野湾市地主会、地域、国などの関係機関との信頼関係が、円滑な跡地利用につながったと思います。現在、西普天間住宅地区は跡地利用の先行モデルとまで言われるようになっていますが、これは本当に関係者の努力と理解、信頼関係によるものだと思います。

普天間飛行場でも、平成23年から、普天間飛行場跡地の基本構想策定に向け、地権者の子弟を対象とした勉強会を開催して人材育成に取り組んでいます。勉強会では大公園の構想など、夢あふれる構想が出ます。跡地が負の遺産とならないよう長期的ビジョンで取り組むことが大切だと思います。行政にも100年、200年先を見据えて計画していただきたいと考えています。長年、跡地利用に向けた話し合いを続けていますが、返還が延びていることから、返還時期も具体的に決まっていないような状況です。しかしながら、早めの跡地利用計画の策定、軍用地主の若手の会の結成と月一回の協議など、人材育成も含めて今のうちから、きたる返還と跡地利用に向けて備えています。やはり、若い軍用地主の方などからは、普天間飛行場はいつ返還されるかわからないから、毎年、同じことや、未来の議論をしてもしようがない、という声もあります。そうしたとき、私は、私たちの責務として、子供たちのため、ある程度はビジョンをつくっておかないと、子供たちの時代にまた一からの計画づくりで、迷惑をかけてしまう。いまから、未来を描くことが円滑な跡地利用だけでなく、子供たちの人生にとっても重要である、と説明をしています。私も自分の親から、先祖代々の財産である軍用地の意味と重要性を聞いてきました。この大切な財産を子供だけでなく、子孫のことも考え、いかに活用できるかが大切だと思っています。返還跡地に夢広がるまちづくり、そのためには跡地利用特措法が不可欠なことは明白であります。

―跡地利用特措法の今後のあり方―

平成24年4月に制定された跡地利用特措法では、基本理念として、国が主体的に跡地利用を推進することや、支障除去措置や土地先行取得の制度、さらに駐留軍用地跡地利用推進協議会の設置などの改正があり、跡地利用を進める上で非常に有効な法制度です。宜野湾市でもキャンプ瑞慶覧の西普天間住宅地区に適用され、非常に有効だと実感しましたので、ぜひ延長してもらいたいと国へ要望しています。跡地利用特措法がなかったら、これまでのように円滑に跡地利用を進めることができなかったですし、関係者、軍用地主の不安は図りしれなかったと思います。

沖縄県が取りまとめた「新たな沖縄振興のための制度提言」は各市町村や土地連の要望を加味してもらっていますので、必ず、取り込んでもらいたいと思います。特に、軍用地主への影響の多い、給付金等の上限額撤廃は実現してもらいたいと思います。

宜野湾市地主会では、国へ跡地利用特措法が必要なので、期限延長及び見直しをお願いしたいといっても、国はハードルが高く、なかなか実現ができないので、他の地主会や沖縄県、土地連と一体となり、この制度の延長及び見直しを強く求めていきたいと思います。そこで、やはり、土地連で各地主会の意見を集約して、国への要望内容もまとめてもらっていますので、宜野湾市地主会長としても、やはり、それをとりまとめて土地連の声を聞いてもらいたいと思います。

跡地利用特措法が制定されてからは、国の責務に基づく跡地利用の推進という基本理念、特定給付金の創設などが明記されたことで、地権者にとって安全・安心な返還、跡地利用ができるようになりました。沖縄県が国へ求めている跡地利用特措法の延長及び見直しについての内容も、土地連の要望を受け入れていただいたものであることから、土地連会長として、今後も沖縄県と連携して国へ求めていきます。
跡地利用が沖縄の将来を大きく左右するものになります。次世代に豊かで住みやすい沖縄を残すために、跡地利用特措法の期限延長及び見直しが必ず必要です。その跡地利用特措法の期限延長及び見直しについては、軍用地等地主による総決起大会を今年昨年の11月27日に開催して決議を行いました。

その決議した結果の要望事項は、
1 【跡地利用特措法の期限を延長すること】
2 【給付金及び特定給付金の上限額を撤廃すること】
3 【段階的に返還される場合でも、拠点返還地に指定すること】
4 【沖縄県における自衛隊施設用地を同法律の適用対象とすること】

でございます。

―土地連が求める跡地利用特措法の期限延長及び見直しの内容―

1 【跡地利用特措法の期限を延長すること】について

理由:
駐留軍用地が返還されても地権者に対する補償や跡地利用のための措置などがほとんどなく、地権者は長年、駐留軍用地の返還に関する法律の制定を求めてきました。戦後50年経過した1995年にやっと軍転法が制定されましたが、不十分な内容であったことから、2014年の跡地利用特措法の制定まで、一貫して、地権者にとって安全・安心な返還となるように求めてきました。

今日、跡地利用特措法があることで、地権者の不利益とならない、安全・安心な返還を実現できていることから、時限立法である同法が本年度末の期限切れにより失効することは地権者にとって不利益となります。よって、同法の期限を延長することがまず大前提です。

そして、嘉手納飛行場より南の駐留軍用地、約1,000haの返還が今後本格化する見込みとなっています。返還後の跡地利用を地権者の理解のもと、円滑に進めていくためには、跡地利用特措法の延長と土地先行取得基金制度や税制優遇措置等の特例措置の継続が必要です。

そうしたことから、現行制度を活用した跡地利用の取組を進める中で、新たな課題等が生じており、今後返還される駐留軍用地の跡地を円滑に進めていくためには、法制度の見直しが必要です。

 

2 【給付金及び特定給付金の上限額を撤廃すること】について

理由:
返還後、地権者には賃貸料相当額の給付金が支給されますが、現行法では、地権者一人あたりの給付に上限があることから、既に上限額まで給付金を受けた地権者が返還を受けても、その土地への給付金が支給されないことが懸念されるため、他の地権者と比較して不平等とならないよう、上限額を撤廃することが必要です。国は賃貸料とは違い、給付金は補償金であり、生活補償は上限額の範囲内で満たしているとの見解をもっていますが、地権者にとって、給付金も賃貸料と同じく生活のための資金であり、その違いを地権者に求めることは筋違いであります。給付金及び特定給付金は地権者が土地を使用収益できないことに対して、補償的に支払われるべきものであり、一部の地権者には不公平な取扱いとなっています。
そうしたことから、上限額の撤廃が必要です。

 

3 【段階的に返還される場合でも、拠点返還地に指定すること】について

理由:
大規模な駐留軍用地の返還、並びに段階的に返還される大規模な駐留軍用地の返還については、一体的な跡地利用が推進できるよう、従来どおり、拠点返還地として指定し、国の取組方針を策定する必要があります。

駐留軍用地になったのは地権者の要望とは別に奪われた土地であります。部分的に返還されても、円滑な返還地全体の跡地利用につながらず、返還地が一体的に利用できて初めて、円滑で経済的で合理的な利活用となります。返還にあたっても、借りた側である一方的に国の都合でなく、返される地権者の側に配慮して一体的な跡地利用ができるように拠点返還地に指定する必要があります。

具体的な例として、牧港補給地区(268ha)は統合計画で段階的な返還が示されていますが、沖縄県及び浦添市においては一団の土地として、跡地利用の推進を図っていく予定です。
なお、大規模な跡地利用にあっては、国の積極的関与が必要ですが、段階的な返還(各200ha未満)にあっては、国の取組方針策定義務(200ha以上)の対象外となる可能性があり、一団の土地として、跡地利用に支障が生じる恐れがあります。
そうしたことから、段階的に返還される場合でも、拠点返還地に指定することが必要です。

 

4 【沖縄県における自衛隊施設用地を同法律の適用対象とすること】について

理由:
沖縄県における自衛隊施設用地のほとんどは、沖縄返還協定に付属して締結された、「基地に関する了解覚書」によって米国政府から日本政府に引き継がれたものです。すなわち、地主に返還されることなく、日本政府が引き続き使用しており、その歴史的背景は駐留軍用地と何ら変わらないことから、同一に取り扱うべきです。

つまり、沖縄県における自衛隊施設用地は、元来、駐留軍用地であり、移管されて後、日本政府が引き続き使用しているという歴史的経緯を鑑みて、駐留軍用地と同様に同法律の適用対象とするべきです。自衛隊施設用地への移管もまた国の都合によるものであり、地権者にとっては駐留軍用地としての提供と何ら変わらないことから、同様に配慮する必要があります。

地権者は、駐留軍用地と自衛隊用地との如何に関わらず、国の政策や財政上の事由により前もって返還へ備えることなく、一方的に返還されるというリスクを強いられ。また、返還後も原状回復や跡地利用への合意形成に時間を要することから、その間の生活補償や再建に向けた取り組みについても不安を抱いています。

現時点では、国は自衛隊施設を返還する国策はなく、これまでの返還事例もないという考えがありますが、国策が変わらない保証はなく、地権者の不安は大きいことから、その不安を取り除く施策が現段階で必要であります。
したがって、地権者の不安を払拭するため、沖縄県における自衛隊施設用地についても地権者が不利益を被ることなく、駐留軍用地と同様に国の責任において原状回復措置を行い、給付金支給の措置及び跡地利用に関する様々な行財政上の措置を講じる必要があります。
そうしたことから、沖縄県における自衛隊施設用地を同法律の適用対象とすることが必要です。

―運用面についての要望事項―

法律面での要望事項に付随して、法律の運用にあたっては、要望事項を取りまとめましたので併せて要望します。

〇自衛隊施設用地への適用について(第2 条:定義関係)
元来、駐留軍用地であった自衛隊施設用地が返還され、今後、地権者に不利益が生じることが判明した場合には、駐留軍用地と同等の措置を受けられるよう、法律の改正や新法制定を求めるなど、様々な視点から
対策を講じていただきたいと思います。

〇給付金等の支給について(第10 条:給付金の支給、第29 条:特定給付金関係)
給付金等の支給額について、周辺の提供施設において賃貸料額の改定があった場合は、その改定を給付金・特定給付金にも反映していただきたいと思います。

〇段階的に返還される区域の一体的な跡地利用に向けて(第26 条:拠点返還地の指定、および第27 条:国の取組方針の策定関係)
大規模な駐留軍用地が返還される際は、返還のあり方(段階的・部分的)に関わらず一団の土地として、区画整理事業を実施する際も同様に取り扱ってもらいたいと思います。
具体的には、区画整理事業の認可を得るまでの期間で、引き渡し時期の違いによって同事業の認可に遅れが生じる区域がないよう、一団の土地として取り扱うことです。
地権者への特定給付金の支給も区画整理事業の認可時期の違いに関わらず、一団の土地を有する者へは不利益を被ることがないよう同様に取り扱うことをお願いいたします。

―終わりに―

本会からの要望は以上になりますが、これらを踏まえ、跡地利用特措法の期限延長及び見直しをしていただくことで、これまでの問題、課題点をクリアできます。(段落上げました)また、返還地の土地と空間の利用が大きな経済効果を生み出し、沖縄経済の核となり、沖縄全体の発展につながるものと多くの沖縄県民が考えております。
「沖縄の新しい時代を切り開き、返還跡地に夢広がるまちづくり」を実現するため、県民のみならず、全国民が跡地利用特措法の期限延長及び見直しについて、その重要性をご理解いただけるように心からご期待を申し上げます。

2022年(令和4年)1月吉日
会長  又吉 信一

ご案内